山で遭難した人の捜索や救助活動がスムーズにできるよう、三重県警がデジタル技術の活用を進めている。20日には県とともに、登山者に人気のスマートフォン地図アプリ「YAMAP」の運営会社と協定を結んだ。アプリ利用者が遭難した場合に登山ルートや装備を確認でき、捜索範囲も絞り込めるという。
YAMAPは福岡市のヤマップ社が手がけるサービス。通信電波を拾えない山中でもGPS(全地球測位システム)で地図上のどこにいるかがわかるのが売りで、累計ダウンロード数は約390万件に及ぶ。登山計画をつくったり、写真を投稿できたりする機能もあり、2021年の調査では登山アプリ使用者の7割超が使っているという。
今回の協定では、利用者がアプリ上で登録した登山計画を正式な「登山届」として扱うようにする。遭難の恐れがある場合にはヤマップ社が県警に位置情報などを提供し、捜索に役立てる。県警の岡崎浩司地域部長は「スピーディーな活動ができるだけでなく、範囲を絞れることで捜索にあたる警察官の安全にもつながる」と期待する。
県警や県は、これまでもデジタル技術を山岳救助に活用してきた。20年には日本山岳ガイド協会と組み、インターネットで登山届を出せるシステムの運用を開始。翌年には県の電子申請システムを応用し、QRコードなどから登山届を出せるシステムも稼働させた。
ただ、利用は必ずしも進んでいない。県警によると、22年の県内の遭難者86人のうち、8割強にあたる70人は登山届を出していなかった。県の山川晴久スポーツ推進局長は「使う人が多いYAMAPと提携することで、届けを出してもらいやすくなれば」と話す。
アプリの基本機能は無料。ヤマップ社の矢島夕紀子さんは「一人でも命を救えるよう、アプリを普及させたい」とする一方、「スマホは電池切れもある。アプリを過信せず、山登りには紙地図とコンパスも携行して」と呼びかけた。全国ではすでに群馬、岐阜など16府県警が同様の協定をヤマップ社と結び、救助活動に役立てているという。(山本知弘)
三重県内の山岳遭難者数は
(カッコ内は死者・行方不明者)
2018年 61人(7人)
19年 96人(6人)
20年 79人(7人)
21年 80人(6人)
22年 86人(13人)
遭難者の特徴を22年でみると
・登山届を未提出 70人
・県外居住者 50人
・道迷い 36人
※いずれも県警まとめ
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル